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「ちょっと、やぁだ。店に女の子なんか連れ込んじゃって、あんたたち何をしたのよぉ」
「ご、誤解だよ。彼女、ゼミ仲間の山下弥生。肉が苦手なくせに焼肉屋に行って、何も食えずに腹ペコだったから……って、別に母ちゃんには関係ねぇだろう」
珍しく女の子と二人きりだったせいか、何もないのに口からは言い訳めいた言葉が勝手に出てきてしまう。
「お、お邪魔しています、小田君と同じ学科の山下弥生と申します。いつも小田君にはお世話になっています。えっと、こちらは小田君のお姉さんかしら?」
山下が必要のない勘違いをしたものだから、母ちゃんは調子に乗ってしまったようだ。
「やぁだぁ、お上手ね。お姉さんだなんて、また言われちゃったぁ」
露骨に喜びやがって、似合わない可愛い声を出すんじゃあない! 俺は心の中で毒づいた。
「姉でなく母親。これ、俺の母ちゃん。十四歳で俺を産んでいるから、もう三十五歳ね。若く見えるのは、きっと店の照明のおかげだね。お天道様の下だと、リアルアラフォーだから。あんまりおだてないように気をつけて」
そう紹介すると、山下の顔がぱっと明るく輝いた。
「す、すごい! こんなに若くって可愛い方が、お母さんだなんて。小田君、すごい!」
「あちゃあ!」
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