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そして、次の土曜日。俺の予想通り、ベン先輩が店に現れるなり叫んだ。
「わぉ、良い眺めだねぇ。ちえみさんと弥生ちゃん、二人揃うと美人姉妹って感じで最高!」
ほら、ここにまた一人、おだて虫が登場した。
「姉妹は無理だよ、先輩。山下にはリアル姉ちゃんがいて、今二十五歳なんだって。母ちゃんと十歳も違うんだぜ」
「大丈夫、大丈夫。ちえみさんだったら二十九歳で通るから、やっぱり姉妹路線で行こう」
「嬉しい、勉君。三十じゃなくて、二十九歳ね」
またまた女心をくすぐる微妙な年齢を出して、母ちゃんをその気にさせるテクニシャン! 城島勉は、おそるべき男だった。
十四歳の母という小田ちえみの現在を受け入れた山下だが、過去の詳細は未だ知らずにいる。カフェの常連客やカフェを訪れるNPO関係者、ベン先輩でさえ表面的なことは知っている様子だが、山下は自分から根掘り葉掘り聞き出すような性格ではなかった。
「母ちゃんは妊娠した途端、俺の父ちゃんに逃げられたんだよ」
「へっ?」
「ずっと聞きたかったんだろう? 三十五歳で二十一歳の息子がいるって、どう考えたって不自然だもんな」
「そ、そうよね。でも、個人的なことだし、あれこれ聞くのも図々しいかなぁって思っていたから」
控えめな性格の山下らしい反応だった。
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