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命日
IT関係と言うと受けが良いらしい。
まあ技術者では無いのだが、或る意味
金の有る人間の象徴の様だ。
大学時代の先輩に無理に誘われ合コンに参加した。
楽しみにしていたライブまでキャンセルしてまで来たのに…
車で駆けつけたので酒は飲めないし反動でバクバク食いまくった。
メシ食えただけ良かったか。
そう言いながら自分を慰めて帰路に着いた。
車を走らせながら、唐突な回想…
ミキと別れてから何年?だ?
永過ぎた春、10年それが2人で居た時間だ。楽しかった、喧嘩もした、病気も2人で乗り越えた。
でも終わりは呆気なく訪れる。
連絡が付かない。突然、そして急に。
柱の抜けた空家の様に簡単にココロは崩れる。僕はパニックになり、そして病んだ。
怠い動く気がしない。所謂引きこもりだ。
何かが音を立てて滑り落ちた。
心療内科に通い、薬で紛らわせなんとか生活を維持した。
双極性障害、それが診断の結果だった。
吐き続けた嘘はいつの間にか自分の中で真実となり実体化したのだった。
素敵な女性を見ても何も感じない。
セックスの為のおもちゃ…
だから金で買って紛らわせ自分に嘘をついた。そこいらに転がっている女より余程良い女を抱けた。
充分だった。
人として壊れてしまった、感情と言う感情がカケラとなり集めようも無い程に細かく砕けた。
失くしたモノはカンストし累積されていた。
もう取り返しが付かない程に。
ナニカを切り捨てココに戻ってきた。
その何かはすでに分からなくなっている。
「ありゃ?事故か? 」
仕事の帰り道、車の事故を目撃した。
タイヤ跡からするといきなりの蛇行から車線を飛び出し対向車線のトラックとのキス。
「最後のキスがトラックはヤダな。」
ゾッとしながら通過。その時に般若心経を一巻あげ弔った。言葉の通じる人間なら成仏の役に立つはずだ、他人の人生なんて垣間見る事は出来ないが無念も残るだろう。だが、転生の為には亡者とならず審判を受けなければならない。
なんて先輩の受け売りですけど…
「もう寒いなぁ、この時間になると。」
今日は日付変わって11月19日初冬の寒さが身に染みる。
仕事の方は順調で、評価も悪く無い。このまま行けば新年度には課長の席が待っている。頑張った自分をしっかり褒めたいと思うくらいだ。
明日は楽しみにしていたイベントがある。物販もあるから早起きだサッサと帰ろう。
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