命日

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「お話迷惑ですか?」 「えっ?」慌ててイヤホンを外す彼女。 口元を注視する違和感を確かめてみよう。 「もしかして聞き取りづらいですか?」 俯向き視線が口元にから足元に移る。 「癇に障ったら無視して下さい。僕は去年の今頃まで鬱で治療を受けてました。」 唇の動きを見て驚く彼女。 「突発性難聴なんです。左右ともイキナリ、以前の半分くらい聞こえなくなりました。」 「やっぱり、そうでしたか読唇術を使われていたようなので、耳に何かあるのだろうと思いました。」 「バレましたか?隠せないものですね。」 また笑顔を見せてくれた。 「僕もまだ心に傷は残ってます、でも生きてる以上悔やんでも仕方ないですから。」 「今、残っている聴力も徐々に失われています。CDでは音楽を楽しめない状態なんです、だから会場で音圧を五感全てで感じたいんです。」 パワフルなステージを楽しませてくれるアーティストなら彼女に音楽を体感させる事が出来るだろう。 「今日のライブ楽しみですね!」 「はい!」 物販が開始され列が動き出す。 販売されるグッズをスマホで確認して合計を計算すると…ありゃ予算オーバーでは? この時計、桁がぁ~そんなぁ~ 今回は保留か?? はぁ… 「これ買うんですか?」尋ねると 「迷ったら買うが信条ですから。」 「名言ですね。」 二人して笑いながら品物を選ぶ。 楽しい時間はやはり早く過ぎる。 開場・開演まであっという間だ。 もしもTwitterだけでもフォローさせて貰えれば… また会いたい。 素直にそう思った。 「Twitterのアカウント交換しませんか?」 「いいですよ!こちらから聞こうお思ってたんですよ。教えたく無いのかなぁと思ってた所ですから。」 僕は照れながらアカウントを交換した。
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