1人が本棚に入れています
本棚に追加
「お話迷惑ですか?」
「えっ?」慌ててイヤホンを外す彼女。
口元を注視する違和感を確かめてみよう。
「もしかして聞き取りづらいですか?」
俯向き視線が口元にから足元に移る。
「癇に障ったら無視して下さい。僕は去年の今頃まで鬱で治療を受けてました。」
唇の動きを見て驚く彼女。
「突発性難聴なんです。左右ともイキナリ、以前の半分くらい聞こえなくなりました。」
「やっぱり、そうでしたか読唇術を使われていたようなので、耳に何かあるのだろうと思いました。」
「バレましたか?隠せないものですね。」
また笑顔を見せてくれた。
「僕もまだ心に傷は残ってます、でも生きてる以上悔やんでも仕方ないですから。」
「今、残っている聴力も徐々に失われています。CDでは音楽を楽しめない状態なんです、だから会場で音圧を五感全てで感じたいんです。」
パワフルなステージを楽しませてくれるアーティストなら彼女に音楽を体感させる事が出来るだろう。
「今日のライブ楽しみですね!」
「はい!」
物販が開始され列が動き出す。
販売されるグッズをスマホで確認して合計を計算すると…ありゃ予算オーバーでは?
この時計、桁がぁ~そんなぁ~
今回は保留か?? はぁ…
「これ買うんですか?」尋ねると
「迷ったら買うが信条ですから。」
「名言ですね。」
二人して笑いながら品物を選ぶ。
楽しい時間はやはり早く過ぎる。
開場・開演まであっという間だ。
もしもTwitterだけでもフォローさせて貰えれば…
また会いたい。
素直にそう思った。
「Twitterのアカウント交換しませんか?」
「いいですよ!こちらから聞こうお思ってたんですよ。教えたく無いのかなぁと思ってた所ですから。」
僕は照れながらアカウントを交換した。
最初のコメントを投稿しよう!