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ペットボトルの祓い師
柔らかな春の日差しが、ガラス越しに降り注ぐ。ポカポカと暖められた縁側にあぐらをかいて、清司はおみくじを作っていた。
白い着物に水色の袴をはいて、肩の下まで伸び放題になっている毛先だけ茶色に染まった髪は後ろに束ねて、時々傍らに置いたペットボトルの水を口に含みながら黙々と。
神社の仕事をする時は、いつも禊ぎを行った上で着物に着替えて、身も心も清らかに保って行うようにと、うるさく言われているので仕方ない。
清司の家は数百年の歴史を持つ神社の神主をしている。家は社に隣接して建てられていた。
現神主は清司の父で、清司は成人してから祭主として神事を司っている。今は四月頭の桜花祭神事の準備で忙しい。
小さな神社だが境内には桜の古木があるので、祭りに合わせて花見客も多く訪れる。おみくじが品切れになってはまずいので、補充しなければならなかった。
ポカポカ陽気に船をこぎそうになるのを必死に耐えながら、一心におみくじを折りたたんでいると、縁側のガラス戸が開いた。
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