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清司は顔だけ近づけて、勾玉をまじまじと見つめる。やはり嫌な気をまとっているようだ。
「どうしたんだ? これ」
「呪いの勾玉」
「は?」
蒼太が通う大学院で物理学研究室がある建物の裏山が、春の長雨のせいで土砂崩れを起こしたらしい。幸い建物にも人にも被害はなかったが、土砂を撤去していると崩れた山肌に古い石造りの祠が現れた。
興味本位で物理学研究室の学生がのぞきに行って、そこで見つけてきたのが件の勾玉だという。
ところが勾玉を持ち帰った学生が、翌日から体調不良で寝込んでしまった。見舞いに行った学生は「気持ち悪いから持って帰ってくれ」と勾玉を押しつけられ、持ち帰ったところ、その学生も寝込んでしまった。
勾玉を手放した学生は、しばらくすると回復したらしいが、勾玉の持ち主は体調を崩してしまうようだ。それが回り回って蒼太の所にやってきたという。
「なんで、おまえ平気なの?」
「わかんねーけど。神社に友達がいるからじゃねーかって言われてさ。お祓いしてもらってくれって頼まれたんだよ。悪霊払いしてくれよ」
ずいっと目の前に勾玉を差し出され、清司は慌てて身を引く。
「無理無理。オレ拝み屋じゃねーし。元の場所に戻しとけよ」
「え? それでなんとかなるもんなの?」
「さぁな」
「……適当かよ」
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