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蒼太がガックリと肩を落とした時、奥からクスクスと笑い声が近づいてきた。
「清司さん、意地悪しないでお祓いくらいしてあげたらいいのに」
白い着物に赤い袴の巫女装束に身を包んだ少女が、ニコニコ笑いながらお茶を運んできた。清司の妻、依久だ。
「あれ? 社務所の方は?」
「お養父さんが帰ってきたし人も来ないから、もう上がっていいって」
運んできたお茶を蒼太に差し出し、依久は清司の隣に座った。出された茶をすすりながら、蒼太はついでのように依久の前に勾玉を差し出した。
「そうだ。巫女さんだから依久さんでもいいよ。お祓いしてくれない?」
清司は慌てて依久を横から抱きしめて勾玉から引き離す。
「ダメ! 依久ちゃん、こいつに触ったら汚れるから」
「なんだよ、おまえ。触らなくてもいいからお祓いしてくれるだけでいいんだよ」
「とにかくダメ」
清司と蒼太が押し問答をしていると、清司の腕の中で依久が申し訳なさそうに口を挟んだ。
「あの、私にはお祓いとかお清めとかできる能力はありませんので、ごめんなさい」
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