10.番犬との約束

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「うーん…、それについては返す言葉もない」 肩を竦め、苦笑を浮かべる専属医。ルカの方は何も弁解しないと暗に示すつもりか、金灰色をそっと伏せるのみで。 ──なら、今回のことはちゃんと反省すること。そして、次はこの失敗を繰り返さないようにすること。 人というものは誰しも、長々と怒られたり叱りつけられるのが嫌いなものです。時には逆効果になりかねないということを知っているレオンは、2人の様子を見、そう言ってこの話は終わりにしようと考えたのです、が…。 口を開きかけた時、クンッと服の裾を引く力を感じ、レオンはその箇所へ視線を落としました。 「、メル…?」 服の裾を引いていたものの正体。それは、大きさが合わず少しダボついた服の中から伸ばされた幼い手で。 子供用の服でも少し手を上げればずり落ちてしまう、細い腕。 街で見かける子供たちとは違う、日焼けを知らない白い肌は儚いようにも、とても壊れやすいもののようにも見え、若き騎士は咄嗟に動きを止めます。 乱暴に身を引けば、傷つけてしまうかもしれない。 メルは騎士であるレオンにそう思わせるような雰囲気を秘めており、初めて自分から触れてくれたこともあって、上手くそちらに向き直ることができません。
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