02.森の中

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眠りに落ちる前、幼子を抱いていた、温かな手の持ち主はいません。 見覚えのない場所。独りぼっち。寝起きの故の心細さ。それらからじわりと視界が滲むのを感じながら、幼子は身体を起こします。 ……、…ん……? 幼子は身体を起こせるという状況に小首を傾げ、一瞬の間の後、自分の身体を見下ろします。 そして、その、幼子特有の大きな瞳を、溢れんばかりに見開きました。 ──幼子は驚きました。とてもとても、驚きました。じんわり滲んだ涙が、驚きで引っ込んでしまうくらい。 服は、眠る前に着ていたサイズの合わないパジャマとは違って、汚れのない、所々に繊細な模様の描かれた、可愛らしい白のワンピースに変わっており。 白い肌に目立っていた、お母さんが叩いた為に出来た赤紫色の痣も、薄っすらと残っていた傷跡も、綺麗に消えていたのです。 空腹感は残っていますが、眠る前にあれほど感じていた身体の不調は、嘘のようになくなっていました。
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