10.番犬との約束

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先程自己紹介をしましたし、その後は無闇やたらに構うことも、触れることもなかったのが功を成したのでしょう。 最初こそ怖がっていたメルですが、今は少し落ち着き、ルカの傍から顔を見せています。 そんなメルを驚かせないよう、一定の距離を置いて近づいたレオンは、幼子を安心させるように懐っこい笑みを浮かべ、少しでもわかりやすいよう、身振り手振りを混ぜながら説明を始めました。 「メル、メルが今いるのは、王国に属する騎士団。その騎士たちが暮らしている、騎士舎という場所っす!その中でもここはルカの部屋っすねぇ。騎士団っていうのはすっごいんすよ!真っ黒でこわ~いお化けみたいな“魔獣”というものを倒したり、悪いことをする人から沢山の人を守ったりする人たちのことっす!魔獣は、メルも見たことがあるっすね」 そこまではニコニコと笑顔で話していたレオンですが、不意に言葉が切れました。 一瞬だけ、ずっと楽しそうに輝いていた色素の薄い瞳に影が落ちましたが、エディやルカの視線が向けられるより早く。 まるでそれは気のせいだったかのように、また同じ調子で説明が再開されます。 「…王国、と付く騎士団。だから、勿論王さまや偉い人たちを守るっす。でも、今の王さまはとっても優しい人なんで、俺たちは安心してこの国の人々を守れるんす!王さまが怖い目に遭いそうになったら、俺たちは全力で守るっすけどね!」
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