10.番犬との約束

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中途半端な姿勢のまま、じっと花色の瞳を向けてくる幼子を見返すと、メルの音を紡がない唇がはくりと動きました。 「…、……っ、……」 何かを訴えるように懸命に動かされる口と、少し下がってしまった眉。耳はペッタリと垂れており、そんな状態で物言いたげに見上げられて、レオンはぐっと言葉を詰まらせます。 「…あ、っと。これ、ルカたちを叱ってたから、止めようと…俺からルカたちを守ろうとしてるんすかね。…メルは優しい子っすねぇ」 突然の行動の理由。現状、考えられるのはそれ以外ありません。 レオンはそれに小さく溜息を吐きつつ、困ったような笑みを浮かべると、メルに傅き視線を合わせました。 「そうっすね、先生もルカも反省しているし、もう怒るのは止めるっす。メル、…良い子良い子、っす」 ──出会って間もない、知らない男相手でも、大事な人のために頑張れる良い子。 そう思いながら言葉を紡いだレオンは、よく街の子供を相手にしているということもあり、自然とメルの頭へ手が伸びてしまいます。 色素の薄い瞳をゆるりと細めて。滑らかな子供特有の髪を撫で、そのままスルリとまろい頬に触れたところで──自分の無意識の行動に、思考が追いつき。 ビシリ、と、電流が走ったような衝撃と共に、その身体を強張らせました。
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