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最早、逃げることなど考えられず、自らに振り下ろされる魔物の足を見つめる幼子。
魔物は、目の前の餌の命を奪うことを、幼子は再びあの闇の中に引き戻されることを確信しました。
──けれど。凶刃は幼子の柔肌に食い込むことなく。
双方の予想を裏切る形で、死は遠のくことになります。
幼子は、見ていました。あともう少しで届きそうだった魔獣の足が、見当違いの方向へ弾かれる瞬間を。
──見たこともないほどうつくしい獣が、死そのものであった魔獣に喰らい付き、打ち倒すその瞬間を。
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