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漆黒の獣は幼子がよく読んでいた絵本に登場する、狼によく似ていました。
背筋を伸ばして、凛とした眼差しでこちらを見る姿は気高く。彼らが森の王、と呼ばれる所以を幼子に知らしめます。
狼の片目は傷ついており、見つめ合うのは黄金の隻眼とのみでしたが。
その視線から、狼が幼子を害する気はないということがわかり、幼子は強張らせていた身体から力を抜きます。
必死に生きようと張り詰めていた気が抜けたからでしょうか。
幼子の意識は次第にぼんやりと曖昧になっていき、漆黒を更に深めた一頭の獣を残して、ストンと眠りの中に意識を落としました……。
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