04.ルカとの出逢い

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──張り詰めた糸が切れ、疲労と、魔物に負わされた傷の痛み、失血から意識を失ってしまった幼子。 残された狼は、黄金の隻眼でその姿をじっと見つめます。 ……このような森の中に似つかわしくない、独りぼっちの幼子。 まだ親の庇護が必要な年齢に見えるのに、近くに親の気配はありません。 魔物にやられただろう、背中と足の傷からは少なくない量の血が流れており、このまま放っておけば、傷が原因で、また血の匂いを辿ってきた他の魔獣によって、今度こそ命を落としてしまうだろうことがわかりました。 狼は人間じみた動きで溜息を吐くと、血溜まりの中に沈む魔獣から離れ、幼子の方へ近づきます。 そして、身動ぎひとつせず眠り続ける幼子に触れるのは──獣の足ではなく、人間のものである手で。 獣とも人間とも違う。この世界で【獣人】と呼称される狼は人の姿を取り、その手で地に倒れ臥す幼子を抱き上げました。
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