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狼姿の時と同じく、髪色は何にも染まらない漆黒で、黄金の隻眼は決して目付きが良いとは言えませんが、腕の中の幼子を少なからず心配しているのがその眼差しから伺えます。
歳は成人を超えているようで、傷付き視力を失った灰色の瞳が少し威圧感を与えますが、まだ若い獣人の男でした。
獣人の姿は、基本的には人間と変わりません。
人間と違う点は、自分の意思で獣の姿に変化できることこと。人間姿をとっても回復力や体力が高く、獣の時の特質──聴覚や嗅覚の鋭利さ、身体能力の高さを引き継いでいること、くらいです。
男が幼子の、本来は美しいだろう血に汚れ乱れた髪を古傷の目立つ手で梳き、横に流そうとした時。
幼子の髪に混ざって存在するものを見、男は黄金と灰の瞳を見開きました。
「……どういう事だ、…これは……」
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