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「っ……?」
自分の方を見て、どこか嬉しそうに、安堵した風に表情を和らげる男。
それに幼子はちょっぴり驚いて、なんだろう、なんで笑ってるんだろうと、疑問符を浮かばせながら視線を彷徨わせます。
幼い彼女には、男が考えていることなど想像できません。──ましてや、今この時も幼子の動きが人馴れしていない仔猫のようだ、なんて考え、微笑ましく感じているなど、夢にも思わず。
強さの和らいだ視線に無意識に警戒心を緩めながら、頭に?を浮かばせます。
そして、幼子が疑問符を飛ばしながら小首を傾げ、考え込む姿を男が黙って見守る。暫し、そんな静かな時間が過ぎて。
「……なぁ、お前、名はあるのか」
不意に、遠慮がちともとれる声音で、男が警戒心の薄れてきた様子の幼子に問いかけました。
ここまでの時間、全く声を出していない幼子。彼女は言葉を持たないのか、それとも声が出せないなどの不調があるのか。
それを確かめようとする男の表情は先程までの緩んだものとは変わって、また少し固いものとなっています。
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