04.ルカとの出逢い

13/16
前へ
/349ページ
次へ
──これはまた、面倒な問題を抱えていそうな子供だ。 男は小さな唇を震わせる幼子を見つめながら思考します。 名を聞かれ、口を動かしたということは幼子にも言葉があるということ。 けれどそれが音にならないというのは、何かしらの問題があるはずで。…考えられる理由は複数あります。 魔物に襲われた恐怖によって一時的に声が出せなくなっているのか。それ以前に、病が原因で、また生まれつき声を出すことができないのか。 あまり考えたくない事ですが──彼女が何かに呪われていたり、縛られている可能性。声を失うほど酷いことをされた可能性も捨てきれません。 男が思考を巡らせている間も幼子は苦しげで、何かを恐れるように、その身体は毛布の中で小さく震えています。 出来ることなら、何かに怯えるその小さな身体を抱き締め、頭を撫でて安心させてやりたいものですが。 まだ完全には警戒が解けていないだろう幼子に、男は手を伸ばすことができません。
/349ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1931人が本棚に入れています
本棚に追加