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ルカが口を閉じた以上、幼子の耳に聞こえるのは、遠くで鳴く微かな虫の音と、ルカが絶やさないよう番をしている焚き火の爆ぜる音だけ。
夜の静寂の中、一定のリズムで聞こえるそれらの音に睡魔は強まっていき。やがて、幼子はトロトロと浅い微睡みの中へ落ちていきます。
………。
規則的で小さな寝息が聞こえ始め、それでも振り向かないようにして、暫く。
空を見上げ、まだ夜明けは遠いことを確認したルカは、そっと幼子の方に隻眼を向けました。
頭から毛布を被り、隠れるようにして眠っているだろうと予想していたのですが。まるで、もう怖くないよ、と言うようにあどけない表情をさらして眠る幼子に、その警戒心が緩んでいる姿に、黄金の瞳が見開かれ。
「……………………はぁ」
直後、何かを堪えるように目を閉じ、くしゃりと前髪を握って息を吐くルカの姿を知るのは──青白く輝くお月さまと、周囲で瞬く星々だけでした。
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