第3章 深紅の塔(クリムゾン・タワー)

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  しばらくすると一人の年配の男性が近づいてくる。   「湊くん。退院できたんだね。無事でよかった。」   静かに話す年配の男性には何とも言えない品があった。顔付きは30代後半から40代   ほどだが肌つやがよくしわやシミも一切ない。時が止まったかのように老化を   感じさせなかった。   「社長!。何とか無事でした。」いちかの父英雄は思わず喜びで   一杯になった。 社長はいちかにも目線を向ける。   「いちかさんだったね。すまない。息子が勝手なことをして。」   社長はいちかに軽く頭を下げた。   「そ、そんな。と、とんでもないです。」   いちかは急なことでしどろもどろになり、社長に慌てて近づく。   社長はそんないちかを見て微笑んだ。   「とにかく、今日はゆっくりしていきなさい。ここは大丈夫だ。    万が一テロリストが来ても問題ないから安心しなさい。」   社長はそう言うと2人に会釈して人込みの中に消えた。いちかも英雄も   社長の好意に思わず顔がほころんだ。   会場の中を移動する社長の前に別の角度から長身の男が近づいてきた。               
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