第3章 深紅の塔(クリムゾン・タワー)

16/43
前へ
/2335ページ
次へ
  長身の男が社長の目の前で歩みを止めた。顔を息が感じられる   ところまで近づける。  「何をしに来た?」   社長は鋭い眼光を向ける。  「何をしにって、俺は副社長だぜ。発表会に参加するのは当然   だろう?」   その男は東雲界都本人だった。      「お前は本当に勝手なことばかりしおって、会社はお前の所有物   ではない」   社長はいちかと英雄に目線を向けながら言った。      界都は面白くないような顔をする。  「なら誰のものだ?社長の巽様か?会長の耕造様か?   いつまで親父も爺さんも居座り続けるつもりなんだ?」   社長である東雲巽は息子の暴言を聞き流すが、その表情には   怒りの色が見え隠れする。やがて巽は口を開く。  「いまの発言は見逃すが、もう少し父親と祖父を敬え。お前が   今好き勝手できるのは誰のおかげか考えたほうがいいぞ」   巽の言葉には鋭さと同時に得も言われぬ圧力があった。   だが界都も動じない。  「これからは新しい時代なんだよ。なのに100歳超えた爺さんが   いまだに会長職とかおかしいとは思わないのか親父は?   俺は嫌だね。これからも好き勝手やらせてもらう」     
/2335ページ

最初のコメントを投稿しよう!

56人が本棚に入れています
本棚に追加