第3章 深紅の塔(クリムゾン・タワー)

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  「それよりもだ、なんで警察いないんだ。どう考えてもここが    標的だろ。あいつがそんなこと分からないわけないのに…。」   悟朗はイラついていた。彼の言葉に秋晴は先ほどゲームをしていた   端末を操作し悟朗に見せる。   「悟朗さん。警察は日野の第一工場を標的と断定し総動員している   ようです。」   「何だと?」   「どうやら証拠が出たようですね。昔の仲間からの情報ですが……。」   秋晴からの話を聞き、悟朗は首をかしげる。   「証拠かよ……にしても多少は人員配置するだろう?おかしいよな。」     「悟朗さんあれ……」   秋晴は花蓮のいる先に指をさす。悟朗も秋晴の言葉に双眼鏡を向けた。      悟朗の双眼の先に見えたのは一台の大型トラックだった。    法定速度を守るようにゆっくりと地下駐車場の検問に向かっていく。   ちょうど道路に面して歩いていた花蓮の目の前を通り過ぎるように   トラックが通過していく。トラックの走る音をまじかに聞いて花蓮が   我を取り戻したかのように周りをキョロキョロとし始めた。         花蓮はトラックの行き先に目を向ける。トラックは検問の前で   停止する。警備員がドライバーに話をしているがすぐにゲートの   バーが開く。トラックはゆっくりと視界から消えていった。   その様子を見た花蓮はポケットで振動している携帯端末を手に取る。   「花蓮?聞こえるか。」   「えぇ、私何してたんだろう……。なんか頭がボーっとして。気が付いたら   こんなところに。」   「大丈夫か。」透馬は心配そうに声をかける。   「うん。何とか。そういえば今トラックが通っていったわ。」   「トラックはここからも確認できたが地下駐車場は死角で見えない。    なにか気づいたか?」      透馬の質問に花蓮は少し考える。   「別に普通じゃないかな。警備の人が話してすぐ中にはいったみたい。」   「すぐだと?」   「うん。」   「ちょっとそこにいろ。」   透馬の一言で携帯端末の通話がいきなり切れる。   「ちょっと?透馬?」花蓮は携帯端末を見る。向こうから切られていた。                        
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