第3章 深紅の塔(クリムゾン・タワー)

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  「なによあいつ……。」数分ほどたち花蓮はそう愚痴りながら周囲に   目線をやると一台の乗用車が猛スピードで向かってくる。車は花蓮の目の前で   停車し、ドアがタクシーのように開く。開いた先には髑髏の仮面を   身に着けた透馬が運転席に座っていた。   「乗れ!」透馬は叫ぶ。   「はぁ?」   「早く!」   花蓮は目がきょとんとしたが、透馬の迫力に負け助手席に腰を落とす。   するとドアが閉まり、透馬は強くアクセルを踏む。花蓮がシートベルト   を締める暇も与えず車は猛スタートを切った。   急な重力のかかり方に花蓮は首をシートに打ち付ける。   「ちょっと何よ!」   モーター音を奏でて車は駐車場の検問まで真っすぐに向かう。助手席の   ウィンドウが開き冷たい風が車内に流れ込んできた。風は花蓮の艶やかな   髪を乱れさせる。      透馬はさらにアクセルを踏み車はゲートを突き破る。と同時に   さきほどトラックをいれた警備員に向かって突然左手袖から銃を   スライドさせる。横向きに向けた銃は花蓮の目の前で止まり発射音が   響く。いきなりの轟音に花蓮は耳に手を反射的に当て、次の瞬間   警備員の首先に衝撃が走り痙攣しながら倒れた。   銃から排出された薬莢が車の天井に当たってそのまま花蓮のふとももに   落下した。   「熱っ!」   薬莢は熱を持っており慌てて払い落とす。      車はそのままゆったりとした下り坂を降りていく。オレンジの照明が   車を覆いつくす。花蓮は振り向き通り過ぎるゲートを見た後   すぐに透馬に向かって思わず声を荒げる。  「何考えてるの!なんでいきなり撃つのよ!」   透馬は左手の銃をスライドさせて袖に収納するとハンドルを握り   直す。  「こんな時にトラックをノーチェックで通すものか。さっきの警備員は   NBの内通者だ。」     「えっ?どういうこと?」  「奴らが侵入した。」   透馬は下り坂の突き当りを左に曲がる。スピードのついたコーナリングで   車のテールがスライドする。花蓮も急な横からの力に思わずドアの上の   取っ手をつかむ。  「ちょっと運転荒いわよ! 大体免許持ってんの? それにこの車どこから   持ってきたの!」   花蓮は興奮して言葉を並べ立てる。            
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