第3章 深紅の塔(クリムゾン・タワー)

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 透馬はそのまま正面を見ながら答える。  「それは秘密だ。このままいくぞ!」  「信じられない……」  花蓮は頭を抱える。車はスピードを出しながら道なりに地下まで降りて行った。  一方、地上では悟朗と秋晴を乗せた車が地下駐車場の入口が見えるところまで  移動していた。駐車場に向かう道路からは少し離れたところに停車して周りの  様子を確認する。  「いったいどうなってんだ?なんであの子が黒髑髏と一緒に?」  悟朗は先ほど双眼鏡で花蓮が車に乗るのを目撃していた。しかも運転席に  黒い髑髏の仮面が見えたと思ったら2人を乗せた車は地下駐車場を  猛スピードで突っ切っていった。  悟朗は状況を理解するのに時間が必要だった。2人の関係が分からなかった  からだ。だがあのトラックを追っていったことは理解できた。    「やはりここが標的だ!さっきのトラックはNBだ。黒髑髏が追ったんだ。」    悟朗の言葉に秋晴は困ったような表情を浮かべる。  「悟朗さん……。やばいっすよ。絶対地下でドンパチ始まりますって……」  「そうだな。流石にここは警察の出番なんだが……」  悟朗は考えた。このまま普通に通報しても日野に展開している警察が来るのに  1時間はかかるだろう。通報したとしても自分たちがなぜ現場にいるのか  説明が難しい。かといって何もしないわけにはいかない。  悟朗は頭をくしゃくしゃ掻きながら、半ばやけくそな気持ちで  携帯端末を手に取りある連絡先を選択する。悟朗は諦めたかのように  携帯端末を耳に当てた。  同時刻、日野市にある東雲製薬第一工場には多くの警官が  集結していた。周囲の道路では検問が行われ、慌ただしく  人が出入りしている。工場入口近くに仮設テントが設置され  NBの襲撃に備えていた。    テント内では情報収集が行われていたが、いまだにNBの動きは  ない。そこには現場を指揮している容子の姿があった。違う警官が  出たり入ったりしながら容子に報告している。逐次報告を受け取った  が結果として確実な情報は入手できなかった。  容子は苛立ちを覚える。テント内を常にぐるぐる回っているが  そのうち怒りがこみ上げてきた。彼女の勘はここではないと  訴えかけているが命令に従わざるを得ない自分に腹が立っていた。        
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