第3章 深紅の塔(クリムゾン・タワー)

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 「すまねぇ。だが今はそんなこと言ってる場合じゃねぇんだ。」  悟朗は冷静に答える。  「今本社ビルの側にいるんだがNBと思われるトラックが駐車場に   入っていった。」    悟朗は車の中から駐車場に目線を向けながら話す。  「しかもそれを追って黒髑髏も現れたんだ。そんなところにいる場合   じゃねぇぞ。」  「何ですって?」  容子は悟朗の言葉に思わず声を上げる。    容子は驚いたが同時に疑問も生まれる。  「なんであんたそんなところにいるのよ?」  「それは関係ないだろ……とにかく急いでここに来い!匿名のタレコミって   ことにすれば動けるだろ?」  悟朗は誤魔化すように話題を変えた。    容子は自分の勘が間違ってなかったことを確認し思わず笑みを浮かべる。  「分かった。すぐにそちらに向かうわ。」  「よし、頼むぞ!」悟朗はそう言うと電話を切った。  容子は端末をポケットに入れるとすぐにテントに戻った。そして  テント内に響くくらいの大きな声で叫ぶ。  「いま匿名の情報が入った。NBの実働部隊が本社ビルに突入したとの   ことだ。工場には一部の人員を残し、それ以外は速やかに品川まで   移動する。」  容子は側にいた部下の池田を呼びつける。   「池田。ヘリの用意はできるか?」   「警部。すぐに手配します。」  池田は即答しその場を離れていった。容子はその言葉を聞くとすぐに準備  を始めた。先ほどまでのくすぶりが嘘のように生き生きとしていた。  電話を切ったあと悟朗はため息をつく。  「とりあえずこれで何とかなるだろう……」  その姿を見た秋晴はニヤニヤしていた。  「なんだ?何がおかしい?」  「悟朗さん。なんだかんだで連絡先残してんだなって…」  「うるせぇよ。」  秋晴の冷やかしに悟朗はぶっきらぼうに答え顔を背けた。  2人がそんな話をしていたとき、また車の移動音が聞こえてきた。  悟朗は道路側に目線を送る。すると別の大型トラックが2台並んで  向かってくる。トラックはそのまま一直線に駐車場まで入っていった。  「悟朗さん。あれってもしかして増援ですか?」  秋晴の言葉に悟朗は考え込む。  「分からんが……やばいぞこれは。」  2人は駐車場を見ていたがいきなり地下から轟音が聞こえた。  それは爆発音に他ならなかった。         
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