第3章 深紅の塔(クリムゾン・タワー)

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  先ほどのスピン時に変形した運転席のドアを体当たりで破り   そのまま奥まで二人は転がっていった。車はミニガンの乱射を   受けハチの巣になった。そのまま花蓮がいたら確実にバラバラに   なっていただろう。   透馬は花蓮を抱きかかえるとそのまま走り柱の裏に隠れた。   花蓮を地面におろすと肩を揺らす。   「花蓮!しっかりしろ!大丈夫か?」   花蓮は一瞬のことで訳が分からない状況だった。深呼吸して   落ち着きを取り戻そうとするがすぐにはできなかった。   「一体なんなのよあれ!」    花蓮は恐怖で足がすくんでいた。      「あれは強化外骨格TITAN(タイタン)シリーズ。色からおそらく    海兵隊仕様の汎用タイプAtlas(アトラス)型だ。」   透馬は2体の外骨格を見ながら答える。     「あれが……ニュースでしか見たことなかった。」   花蓮は以前ニュースサイトで見たのを何となく思い出していた。   「当然だ。米軍とNATO軍にしか配備されていないものだからな。    日本での運用は禁止されているはずだ…。そうか、そういうことか」   透馬は何かに気づいた。     「これは米軍の非公式作戦。なら目撃者は残しはしない。」   「えっ」   「いま数人会場までNBが向かっていった。米軍もそのまま会場まで    追撃するつもりだ。だからエレベーターを破壊していないんだ。」   透馬は花蓮の目を真っすぐ見つめる。   「もし会場までたどり着いたら奴らは会場の人間を皆殺しにするぞ。    目撃者を残さないために会場ごと爆破して証拠隠滅を図る気だ。」       透馬の言葉に花蓮は恐怖に身を震わせる。唇を噛み手足の震えが止まらない。   「どうしよう!いちかたちが殺されちゃう!」   花蓮は混乱して首をブルブル震わせる。   透馬は花蓮の腕に手を添えて彼女を落ち着かせるように真っすぐ見つめる。   「花蓮。落ち着け、落ち着くんだ!」      透馬の言葉に花蓮はゆっくりを息をして冷静になろうとした。   「いいか花蓮。これから言うことをよく聞いてほしい。」   「な、何?」   花蓮は震えた声で答える。        「自分が囮になる。だから君がNBを止めにいくんだ。」   透馬の目は何かを決意しているようだった。            
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