第3章 深紅の塔(クリムゾン・タワー)

29/43
前へ
/2335ページ
次へ
  太平洋上の空母の中、入り組んだ先にある作戦室でジェイクはずっと   モニターを眺めていた。遠い日本から配信される映像。それは凄惨な   光景に他ならなかった。話では聞いていたが実際に目撃すると想像を   遥かに超えていた。映像が動くたびに人間の形がバラバラになっていく。   流れた血が、肉片が地下駐車場の地面を真っ赤に染めていく。   だが不思議とジェイクは嗚咽することはなかった。その衝撃的な   映像を普通に見ることができた。抵抗なく受け入れられる自分に   彼は嫌気がさす。すると作戦中の兵士から通信があった。   「India1、対象を排除しました。」通信の後、強化外骨格の首の   動きとトレースして画像が動く。周りを見渡すと穴だらけの車と   人間だった塊が散乱していた。      「India1、了解した。India2、先ほど熱反応があったが排除したか?」   ジェイクの真後ろに仁王立ちした黒人士官が口に当てたマイクで話す。   「India2、対象を見失いました。またもう一人いるようですが感知    できません。」こちらも同様に周りを捜索する。だが視界には    生きた人間の影はなかった。   「了解だ。India2は引き続き周辺の捜索。India1はエレベーターに    乗り残りを追撃せよ。あまり時間はないぞ。」    黒人士官は冷静に指揮する。   「了解。」強化外骨格を駆る2人の兵士の声が作戦室まで届いた。   ジェイクは後ろを振り向き、士官に尋ねた。   「先ほどの画像見ました。民間人のようでしたがなぜ撃ったのですか?」   ジェイクは偶然車にいる花蓮を目撃したため保護するべきと主張しようとした。   だが黒人士官は眉一つ動かさない。       「本作戦の目的はNBの排除。その障害になるものに例外はありません。」   「いや!だってただの女の子ですよ。あれ!」   「目撃者も含めすべて排除となってます。これは本部からの命令です。」   ジェイクは反論するが士官は鋭い眼光をぶつけ返す。   「あなたは今回オブザーバーとして参加しているだけです。アドバイス   だけで十分。作戦に口出しする権利はありません。」      ジェイクは拳を震わせて士官の言葉を受け入れるしかなかった。   目をモニターに向けると大きな動きがあった。
/2335ページ

最初のコメントを投稿しよう!

56人が本棚に入れています
本棚に追加