第3章 深紅の塔(クリムゾン・タワー)

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 「いいか。あのエレベーターは30階まで通じている。その後は階段を使って   45階の大ホールまで行くんだ。」   柱の影から透馬はエレベーターを指さす。花蓮はエレベーターの入口に   体を向けるとゆっくりと立ち上がった。  「透馬……」   花蓮はもう一度透馬の顔を見る。まだ不安そうな表情を見せる。  「大丈夫だ。俺も後から追いつく。」   透馬はそう言うと仮面を装着した。そして2体の強化外骨格に体を向ける。     「いくぞ!、今だ!」  次の瞬間、透馬は柱の陰から飛び出す。2体の強化外骨格から扇状に迂回しながら  自動小銃M4を連射する。顔面を正確に狙うその射撃にミニガンを持った外骨格は  左手で射線を防ぐ。それと同時に花蓮が全力で走りだした。目線をエレベーターの  入口に絞りそのまま血だらけの地面を駆けていく。血だまりを踏み水音がするが  彼女は気にせず振り返りもしなかった。  もう一体の外骨格が花蓮を捕捉する。エレベーターを傷つけないように入口前で  偏差射撃を試みる。それに気付いた透馬は右手一本で銃を連射し、空いた左手で  手榴弾のピンを抜き、アンダースローで投げつける。高速で飛んでいき花蓮を狙う  外骨格の足元で爆発しその衝撃で対物ライフルの銃口が真上に向いた。瞬間  ライフルから弾丸が高速で飛び出しエレベーター前天井のパイプに直撃する。  パイプに大きな穴が開き、中から蒸気が飛び出す。その蒸気が天然の煙幕になった。  花蓮はエレベーターまで走り込み操作盤がある壁に身を寄せた。慌てて何度も  閉めるボタンを連打する。やがてゆっくりと金属の扉が閉まっていった。  扉が閉まりきった後エレベーターはゆっくりと上昇しだした。花蓮は大きく  深呼吸をしエレベーターの壁に体を預けた。腰には肩から下げたMP5が  見えた。よく見ると薄っすらと血痕があった。前の持ち主のだと想像できた。  エレベーターの表示番を見ると数字がどんどん増えていく。同時に重力の影響  で体が少し軽くなる感じがした。その時また花蓮の意識が一瞬遠くなった。  それは建物の入口で感じ、無意識で駐車場まで歩いたときと同じ感覚だった。  透馬がデジャヴかと聞いたとき花蓮は答えられなかったが今は確信めいた  ものを感じた。  (私、ここに来たことがある……)        
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