第3章 深紅の塔(クリムゾン・タワー)

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 地下駐車場ではまだ戦いが続いていた。2体の強化外骨格は黒い髑髏を  捕捉するが決定打を与えられない。素早い動きと遮蔽物を利用した戦術で  翻弄しているように見えた。だが決定打が与えられないのは透馬も同様  だった。彼の武装では強化外骨格の装甲を破ることができない。Atlas型は  汎用型だが5.56mm 弾では装甲に傷がつく程度である。  今透馬の手札は弾切れ近いM4と1つずつの手榴弾、発煙手榴弾。それと  同時に入手し懐に忍ばせた大型ナイフだけである。袖に仕込んだ銃は  対人用で考慮されてない。  「さて、困ったな……。」  透馬は思考する。2体の強化外骨格をまとめて相手するのは絶望的であり  なんとか1体ずつの勝負に持ち込むしかない。どうするのか考えたとき  ふとある一言を思い出す。       (あたしプロレス好きなの。)  花蓮の屈託のない笑顔が頭をよぎる。思わず透馬の口が緩む。  (そうか……。以外と侮れないか……)  透馬は柱の影で一瞬その場で停止する。何かを調べ思考しまとめているよう  だった。そして発煙手榴弾のピンを抜き2体の強化外骨格に向かって  投げた。物体は放物線を描き2体の間に落下し、次の瞬間白煙が  上がり視界を完全に遮った。    透馬は次の瞬間2体に向かって猛ダッシュする。風のように一瞬で  間合いを詰める。その速度は人間の域を遥かに超えていた。目標は  対物ライフルをもつ1体。狙いを定め強化外骨格の正面に位置する  と小さく飛び上がりそのまま両足を外骨格の胸元にたたきつけた。  強化外骨格はトラックに衝突されたかのように体を九の字に曲げた   態勢のまま高速で壁面にたたきつけられた。その衝撃で対物ライフルも  その場に落とした。壁に丸いクレーターのようなひびが入っていた。  もう一体の強化外骨格は白煙で状況が確認できなかったが、相方  が目の前から一瞬で消えたことで異常な事態と把握した。その場に  向かってミニガンを掃射しようとする。だが透馬は先手を打つ。  すでに体制を低くし地面にキスするくらいの軌道からアッパーを  ミニガンに向かって放つ。  ミニガンは規格外の衝撃を受けて真上を向き強化外骨格の体勢も崩れた。  同時に手榴弾のピンを抜き今度は外骨格の背中に向けて放り投げる。  
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