第3章 深紅の塔(クリムゾン・タワー)

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  少女はハッと我に返った。そして周りも見渡すとそこには男たちが   倒れていた。それはさっきまで銃を持っていたテロリスト集団だった。   光輝く青い目はいつものブラウンに戻っており、花蓮は呆然としていた。     前回ホテルでテロリストを倒し透馬に攻撃を仕掛けた時の不思議な   感触に似ていた。自分の行動を上から俯瞰で眺めている感覚。何を   したのかは記憶にはあるが自分の意志ではなく何かに動かされた   ような違和感。それがさらに強くなったようだった。なにより   自分でも驚いたのは撃たれたはずの右腕であった。   肉がえぐれて全治数週間の傷がふさがっている。血糊で隠れているが   触るといつもの肌の感触があった。撃たれたこと自体が錯覚ではないか   と思ったが、あの時の痛みは本物だった。自分の体に何が起こっている   のか分からず、花蓮は混乱していた。   「私に……一体何が……」   花蓮は自分のことについて考えるのが怖くなった。ここ最近起こった   出来事、今日この建物に入ったときに感じた既視感。疑問だらけだった。   だがどんなに考えても答えはでない。彼女の想像外のことだからだ。   花蓮はいったん頭の隅に置いた。   「でも……防げてよかった。」   花蓮は取りあえず友人と多くの人を助けることができたので今はそれで   満足することにした。そして同時に囮になって地下駐車場に残った透馬の   ことを考えた。あとから追いつくといったはずだが来る気配がない。   彼女は携帯端末を手に取った。   「透馬……無事?」   彼女は何度も呼びかけるが応答がない。あの強化外骨格と戦って無事に   すむとは思えない。最悪の状況を花蓮は想像し恐怖に怯えた。花蓮は   居ても立っても居られず階段まで走り出した。   花蓮は階段を駆け足で下り、搬入用エレベーターのある30階まで   移動した。30階を見回したが戦闘の跡はなかった。少なくても   ここまでは強化外骨格は侵入していないことを理解した。そのまま   エレベーターに乗り地下まで一直線に下降した。   エレベーターが地下駐車場の階まで到達しゆっくりと扉が開く。   駐車場内の煙や塵が中に侵入してきた。花蓮の視界には埃と   塵が充満しており、爆発の破片などが散乱していた。     
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