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花蓮はゆっくりと歩き出す。自分がエレベーターを上がる前とは
まるで状況が違っていた。埃や塵、爆発の残骸、残された爪痕が
戦闘の激しさを物語っていた。
「透馬……いるの。」
花蓮は叫ぶが返事がなかった。だが埃が引いて目の前に黒い影が
見えてきたのを彼女は確認した。
花蓮はそれが透馬に間違いないと思い足を速める。彼女の
視界にはいった時、花蓮はその姿に驚愕した。
黒い服は爆発の衝撃でボロボロと穴が開いている。だが何よりも
目を引いたのは右半身だった。左右非対称に見えたのはあるはずの
右腕が存在しないからだった。右腕は肩口から先が消失している。
しかも本来血が流れ内臓や骨が見えるはずの肩口には火花が散って
おりよく見ると電子部品と金属の骨格が代わりにそこに在った。
何よりも彼女が心臓が止まりそうになったのは首から上だった。
髑髏の仮面は外れており、透馬の顔がそこにあるはずだった。
だが右半分がおかしなことになっている。胸の部分と同様に
金属の骨格が露出しており、頬骨から右目にかけてのラインは
人間のそれではなかった。深紅の目は作られた光を放っていた。
「花蓮……無事だったか……」
透馬の声がいつもと違い加工されたような不自然なトーンになっていた。
同時に作られた深紅の瞳が機械音を立てて彼女に焦点をあわせた。
その時花蓮は透馬が機械の存在あることを悟った。
-第3章完-
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