第4章 帰還せしモノ

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 「はぁはぁはぁ……」  花蓮は全身に汗をかいてベットから飛び起きた。また同じ夢を見たことに  頭を抱えていた。  品川で起きた東雲製薬本社ビル襲撃事件は民間人は無傷、テロリストは  半数以上が死亡するという結末で幕を閉じた。花蓮はあの出来事の後透馬と  ともに地下駐車場から脱出した。また戦闘を繰り広げた強化外骨格も運んだ  トラックも既に姿を消していた。おそらくバックアップの1体が2体を  回収しそのまま撤退したと思われた。  大ホール前の扉に残っていたテロリストはそのまま突入した警官に  取り押さえられた。ホールも解放され皆無事が確認された。  何はともあれいちかも英雄も怪我一つなかったことが花蓮を安心させた。    だがそれよりもさらに多くの疑問が残る。地下駐車場を出たあと透馬は  姿を消した。その後花蓮がいくら端末から連絡しても繋がらない。  あの姿は何だったのか?人ならざるモノ。機械としか思えなかった。    そして自分に何が起こったのかもまた問題だった。奇妙な感覚と  ともにテロリストを倒した時の動き、瞬時に治った右腕の傷、  あの事件の後から続けて見る夢の正体。不安と恐怖が花蓮を  襲う。ここ最近いろいろなことが起こり過ぎて参っていた。  どんなに考えても時間は待ってくれない。今日は月曜日の朝。  花蓮はベットから立ち上がり、階段を下りて行った。  一階に降りるといつもの見慣れた風景が花蓮を迎える。だが彼女の  顔は曇っていた。テーブルに並んだ朝食を見ながら椅子に座り  味噌汁に手を付ける。その様子を見る悠里は心配そうな表情を  浮かべた。貞治も新聞を読んで無関心を装っているがときどき  チラッと花蓮の顔をうかがう。    「花蓮ちゃん。もうすぐ終業式よね。春休みになったらどこか   旅行いこっか?」  悠里はご飯をよそいながら花蓮に向かってほほ笑む。  「うん……。それいいかも。」  花蓮は返事するもどこか心ここにあらずといった感じだった。  だがその言葉を聞いた悠里の悲しそうな顔を見るに彼女は  すぐに声を上げる。  「大丈夫大丈夫! ちょっと最近いろいろあったから元気が   でなかっただけ!」  そう言ってご飯を慌てて口に流し込んだ。そんな花蓮の気遣いを  悠里は分かっているようだった。                 
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