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春が近づき、まだ冷たい風が冬の面影を残すころ
花蓮といちかは並んで学校に向かっていた。事件の後連絡を
取り合ってはいたが、直接会うのは久しぶりだった。
先週はいちかの元気がなく花蓮が慰めていたが今日は
まるで逆だった。花蓮がふさぎ込みながら歩く姿を見たのは
いつ以来だったか?いちかも思い出せないでいた。
「どうしたのよ?元気だけが取り柄の花蓮がさ……」
いちかは横から花蓮の顔を覗き込んだ。花蓮は地面に
目線を向けたままつぶやく。
「別に…… ちょっといろいろ考え事があって……」
いちかは不安な気持ちになった。いつもなら「元気だけが~」の
下りでツッコミが入るはずで彼女もそれを期待していた。
何気ないやり取りだがそれが彼女たちの精神安定剤になっていたからだ。
「悩みがあるなら話してみてよ……。友達じゃん。」
いちかの一言に花蓮は顔を上げる。話してみたら気が楽になるのでは
と考えるようになった。
「実は…」
花蓮は歩きながら最近起こったことをいちかに話した。もちろんすべて
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