第4章 帰還せしモノ

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  花蓮は次々と突き付けられる事実にただ驚愕するだけだった。   「じゃあ、あの黒い髑髏の体はどこなの?」   「現在メンテナンス中だ。あそこまで損傷したのは初めてだからな。」   「ならその体って交換したりできるってわけ? 脳だけ換装するみたいな?」   「察しがいいな。そんなイメージで構わない。」   花蓮は今だに信じられないと思った。彼女はロボット工学などには疎いが   目の前にある技術が見たことのない凄いものだとは肌で感じた。専門用語で   説明されても理解はできないがあの人間離れした動きには納得がいった。   それはそうだ。人間じゃないのだから。         「どこでそんな体を手に入れたの?」花蓮は尋ねる。   「秘密だ。」   「秘密秘密って……困ったらそれ言えばいいと思ってない?」   透馬のルーチンワークみたいな受け答えに花蓮は辟易とする。   「すまない……本当に今は話せないんだ。言えることは俺は君に危害を    加える気はないし、敵じゃないってことだけだ。」   透馬はそう言って深々と頭を下げた。いきなりの行動に花蓮も焦る。   「そんなに頭下げないでよ。助けてくれたのは事実だしそれは   信じてる。ただいろいろあり過ぎて全部は受け入れられないのよ。」   花蓮は透馬に近づき、頭を上げてもらうよう手を添える。彼女は   とてもバツの悪い表情をしていた。透馬を責めていたのは自分の   ことから目を背けたい防衛本能の業だと何となく感じていたからだ。   「あのテロリストたちどうなったのかな……」   花蓮は急に話題を変えた。そして天空を見ながら独楽のように   くるくると回った。      「あの強化外骨格にほとんど殺されたし、残った奴らも警察に    捕まったからな…… とりあえず日本に入国した構成員はほぼ    壊滅したから、しばらくは大人しくしているだろう。」   透馬は冷静なトーンで言った。   「ならしばらくは平和だね!」   花蓮の微笑みは愛らしかった。   「そうだといいんだが……」   透馬はフェンス側に振り向いて遠くを眺める。新たな脅威が訪れる   かもしれないと不安に感じながら…            
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