第4章 帰還せしモノ

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  夕方になり赤々と燃える太陽が西に沈もうとしていた。透馬は学園の門を   くぐり大通りに沿ってゆっくりと歩いていった。普通に見れば学校から   家に帰る学生と誰もが思うだろう。その透馬からかなり離れたところに   花蓮が物陰に隠れていた。彼女は建物や電柱を盾にしながら一定の   距離を保っていた。   屋上で話した後、2人は分かれた。だが花蓮は気になって仕方がなかった。   透馬のことを信じていないわけではないが、秘密といわれると確かめたく   なるのが人間の性だ。そもそも透馬が転校して1週間ほどしか立っていない。   知らないことがほとんどなのだ。どこに住んでいるのか?家族はいるのか?   分からないことだらけだった。   どうせ聞いても「秘密だ」とか言われるのが関の山だ。だったら自分の目で   と花蓮は考えたのだ。離れたところから監視しているが素人なのか動きは   ぎこちない。慌てて小走りしながら物陰に入り込む。しばらくたつと   透馬はある路地に足を踏み入れた。急に死角に入ってしまったため花蓮は   急いで路地が見えるところまで移動した。だが透馬の姿はない。   花蓮が路地の前まで来るとそこには人っ子一人いなかった。あるのは   散乱しているゴミだけで隠れるようなところもなかった。彼女は周りを   見渡すがどこにも痕跡を見つけることはできなかった。   「一体どこ行ったのよ……。」   花蓮はため息をついて肩を落とした。   花蓮の尾行を振り切った透馬はある建物に入ろうとしていた。   白い綺麗な壁面が印象的なそこは家ではなく大きな施設だった。   周辺は塀で囲まれている。比較的最近建てられた建物のようだった。   ゆっくりと門をくぐり、入口の自動ドアに足を踏み入れた。      「おかえりなさい。透馬さん。」   エントランスに入ると奥にいる受付の女性から声が聞こえた。それと同時に   ピンとした姿勢で頭を下げた。その声はあまり感情が感じらなかったが   透馬は手を目の前に上げて無言で挨拶した後、さらに奥にあるエレベーター   までゆっくりと歩を進める。      エレベータの扉が開き中に入ると操作パネルに顔を寄せる。すると   透馬の目から光が出る。その光は一定のタイミングで点滅を繰り返す。                
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