第4章 帰還せしモノ

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  数秒立つと点滅が終わり、エレベーターが下の階に移動する。操作盤の   液晶に出る数字は地下を指し示していた。エレベーターが停止すると   ゆっくりと扉が開いた。   扉の先は白一色で統一された広い部屋だった。広さもかなりのもので   数十メートル先も同じような光景が続くようだった。透馬はその部屋の   すぐ横にある扉の前に立った。先ほどと同じように目が光り何かの   通信を行ったあとロックが解除され扉が横にスライドした。   入った先には小さな部屋だった。そこは大きなテーブルがあり   いろいろな武器や工作道具が散乱している。奥には工場で使用するような   大型の工作機械が鎮座している。透馬が近づくと機械の影から大きな声   が聞こえた。   「透馬! 遅かったじゃないの。」   声の方向に目線を向けると一人の女性が影から現れた。パーマがかかった   長い髪は艶やかで胸の位置まで伸びている。目鼻立ちははっきりしており   大きな二重瞼が妙に扇情的だった。年齢は30代後半ほどだが年齢を   感じさせない若若しさがあった。肌は浅黒く異国の女性のようだ。   何かの整備をしていたようで手には電動ドライバーを持っている。   「ラニさん。ごめん。ちょっと尾行されて…」   透馬はバツの悪い表情を見せた。ラニと呼ばれた女性はゆっくりと   近づき、ドライバーを目の前のテーブルに無造作に置いた。      「尾行って大丈夫?」   「大丈夫。クラスメイトだから。」   透馬の返事にラニは何かを察したようだったが深くは掘り下げなかった。   「ところで修理の様子はどう?」   透馬はラニに尋ねる。ラニはあきれた表情でぼやいた。   「どうもこうもないわよ! 派手に壊してくれてさ!」   ラニはテーブルに置いてあった端末を操作する。するとライトが点灯し   奥の工作機械がある作業場を明るく照らす。そこには黒い髑髏の男の   姿があった。体は固定されており直立している。前回の事件の際に   破損した右腕はまだ失われたままだがボロボロだった顔は修復されていた。   「右腕はまだだめなのか?」   透馬はその姿を見ながら冷静なトーンで聞いた。   「予備のパーツは付けれるけど……。この機会にバージョンアップしようと    思ってねぇ。」               
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