第4章 帰還せしモノ

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  ラニはニヤニヤしながら端末をいじる。なにか嬉しそうだった。   「バージョンアップ?」透馬は首をかしげる。   「それはお楽しみよ。それよりもね透馬、あんまり無茶するんじゃ   ないわよ。この【クリシュナ】はあんた用に調整しているワンオフなのよ。   整備する私の身にもなりなさいよ!」   ラニは透馬を叱りつける。だが悪態の中にも彼女が本当に心配している   ことを透馬は感じ嬉しくも思った。      「ごめんラニさん。でもあの時はああしないとあの兵士が死んでたから……」   「分かってるわ。そういえばあんたに頼まれた件できたけど    見てみる?」   ラニの言葉に透馬は頷き、作業テーブルに足を進めた。   「まずはこのショック弾。」   ラニが指さした先には弾薬が置いてある。透馬はそれを手に取る。   弾丸の部分は透明のカプセルのようで中心には電球のフィラメントのような   物体が浮いている。   「パッと見変わってないようだけど。」   「特殊電解液を改良したから電圧が飛躍的に上がっているわ。   前みたいにベストに当ててもちゃんと無力化できるわよ。」   「なるほどね」   透馬はそう言って弾薬の横に置いていたM9を手に取る。      「前から思ってたけど何でベレッタなの?もう何年前のモデルよ。」   ラニは銃のスライドを引く透馬を眺める。   「昔見ていた映画で記憶に残ってたからさ。2丁拳銃でバタバタ敵を    なぎ倒していくやつ。」   「ふーん。男の子のこだわりってやつ?」   ラニは透馬をからかうように微笑む。透馬も少し恥ずかしそうだった。      「つ、次は…」透馬は慌てて話題を変える。   「お次はこれ。」   ラニは懐から銃を一丁取り出し透馬の目の前に出した。   「グロックじゃないか。」   「45ACP弾が使用できるグロック21だけど、弾丸は硬質ゴム    弾よ。ショック弾が効かない相手用で物理衝撃だからうまく    使い分けてね。ちゃんと2丁用意してあるから腰に差しとして。」   「分かってるね。」   「ただゴム弾とはいえ当たり所が悪いと死ぬこともあるわ。射撃制御は    いままで以上に正確にしないとね。ノリでぶっ放しちゃだめよ。」   「気を付けます…」透馬は頭を抱えた。                   
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