第4章 帰還せしモノ

11/49
前へ
/2335ページ
次へ
「あとはこれね。」  そう言ってラニは床に落ちている箱を重そうに持ち上げてテーブルに置いた。  中を開けると樹脂の緩衝材に守られた榴弾が何個も確認できた。そして  その榴弾を発射するためのM79 グレネードランチャーも。  透馬はその榴弾にじっくりと目線を合わせる。  「多目的榴弾(HEDP)に高性能炸薬弾(HE)、散弾に炸裂弾、   焼夷弾。催涙弾と従来の閃光煙幕弾と」  ラニは左から順番に榴弾を指さしていく。  「いい感じだ。」  透馬は箱の中にあったM79 を手に取りその感触を確かめる。     「対強化外骨格用としてもここまで必要なの?」  ラニは心配そうな目を向ける。  「まああるに越したことはないからね。出来れば使わずに済みたいけど   前みたいな奇策が何度も使えるわけじゃない。」  透馬は中折れ式の銃身に閃光煙幕弾を装てんした。そして壁に向かって  銃を撃つように構える。    「ところで……、地下駐車場の防犯カメラ映像は消去できたそうよ。   ただ45階のカメラ映像は無理だったみたい。」  「なぜ?」  「あの時米軍もシステムに侵入しようとしたみたいでその隙にウィルスを   仕込めたらしいけど…研究所から上は独立したシステムだったそうよ。」   ラニの報告に透馬は顔をしかめる。    「駐車場の件は米軍側も隠蔽したいから同じ目的だったんだろう。しかし   45階の分が流出するとやばいな。」  「透馬……。あんたあの子に固執しすぎよ。深入りするとあんたまで   危険よ。」    そう言ってラニは透馬の手にゆっくりと触れる。その目には悲しみが   あふれていた。     「構わないさ……。そういう契約で俺はここにいる。」   透馬のラニの手をそっと手を握り返し、はっきりとした意志の目を見せる。      「しかたないわね。できる限りサポートするわよ。ところで…   学校生活にはもう慣れたの?」   ラニは顔に喜色を浮かべ、透馬に尋ねる。       「まだ一週間だよ……。なんともいえないね。」   透馬は少し考えこみ、ゆっくりと口を開いた。      「まああんたろくに学校いけなかったからね。今のうちに楽しんで    おきなさい。」   ラニはポンと透馬の肩をたたいた。透馬の顔はすこし曇ったように   見えた。   
/2335ページ

最初のコメントを投稿しよう!

56人が本棚に入れています
本棚に追加