第4章 帰還せしモノ

13/49
前へ
/2335ページ
次へ
  男は脇に挟んだ端末を手に持ち替え指を滑らす。  「2日前襲撃があったにも関わらず、あなたはこんな地の底に閉じこっている。   研究とかいいますが、せいぜい子飼いの化物どもの管理でしょう?   あんな存在本来なら処分するべきのはず。」   男の詰め寄りに天野博士は苛立ちを隠せない。  「お前では話にならん。会長と直接話がしたい。」  「会長はお会いにはなりません。これは社長からの命令です。」  「あんなソロバンしか弾けん男に私の研究の何がわかる?!」   天野博士は大きな声を出し怒りのあまりテーブルを叩く。   その音は部屋中に響き渡った。    男はため息をつき端末を再び脇に挟む。  「とにかくこれは決定事項です。アンブロシアの製造にかかわるデータは   すべて高谷(たかや)博士に渡してください。その他の研究はすべて   打ち切りとします。あの化物どもの処分も合わせてお願いします。」   男の目線は部屋の奥にある別室に向けられていた。そこは光は届かず   ひたすら暗黒が続いていた。  「高谷だと!あんな凡人の若造に私の研究を渡すのか……。」   天野博士は怒りと悔しさのあまり拳を震わせる。  「残念ですが……」     
/2335ページ

最初のコメントを投稿しよう!

56人が本棚に入れています
本棚に追加