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男は脇に挟んだ端末を手に持ち替え指を滑らす。
「2日前襲撃があったにも関わらず、あなたはこんな地の底に閉じこっている。
研究とかいいますが、せいぜい子飼いの化物どもの管理でしょう?
あんな存在本来なら処分するべきのはず。」
男の詰め寄りに天野博士は苛立ちを隠せない。
「お前では話にならん。会長と直接話がしたい。」
「会長はお会いにはなりません。これは社長からの命令です。」
「あんなソロバンしか弾けん男に私の研究の何がわかる?!」
天野博士は大きな声を出し怒りのあまりテーブルを叩く。
その音は部屋中に響き渡った。
男はため息をつき端末を再び脇に挟む。
「とにかくこれは決定事項です。アンブロシアの製造にかかわるデータは
すべて高谷博士に渡してください。その他の研究はすべて
打ち切りとします。あの化物どもの処分も合わせてお願いします。」
男の目線は部屋の奥にある別室に向けられていた。そこは光は届かず
ひたすら暗黒が続いていた。
「高谷だと!あんな凡人の若造に私の研究を渡すのか……。」
天野博士は怒りと悔しさのあまり拳を震わせる。
「残念ですが……」
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