第4章 帰還せしモノ

14/49
前へ
/2335ページ
次へ
 「頼む……もう少し時間をくれ…… 手掛かりはつかんでいるのだ……」   天野博士は先ほどの激高ぶりから反転し頭を垂れて懇願する。  「追って正式に通知がありますので……これで失礼します。」   男は踵を返し見向きもせず部屋を出て行った。その姿を   天野博士はじっと見つめる。やがて男が視界から完全に姿を   消すと思いっきりテーブルにあるフラスコを壁に叩きつけた。      「くそ!くそ!」   博士は獣のような声を上げて怒りを発散させた。   その時奥の暗闇にぼんやりと光が灯る。その光は漆黒の中に   虹色に輝くオーロラのように周りを照らす。博士はその光に   向かってゆっくりと歩き出す。   博士が歩いた先は奥の別室だった。博士は入口にある電源に   触れると別室に明かりがともる。そこにはある物体があった。   2m四方の立方体が台の上に置いている。立方体はガラスの   ような透明な物質で出来ていた。その立方体の中には液体が   充満しており先ほどの光は液体自体が発光していたようだった。      「彼女が……近くに……来た……」      
/2335ページ

最初のコメントを投稿しよう!

56人が本棚に入れています
本棚に追加