第4章 帰還せしモノ

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  突然声がその立方体から聞こえてきた。同時に液体が波を打っている。   液体自体が振動しガラス越しに博士に伝えてきた。   「目覚めたのか……何年ぶりだ……」   博士は目を見開く。そしてその顔にはうっすらと笑みを浮かべる。      「彼女といったが間違いないのか?」   「はっきりと……した確証はない……けどあの爆発の時…    彼女を感じた……20年前の感覚に……似ている。」   ガラスが振動し液体から声が途切れ途切れに聞こえてくる。   2日前の襲撃事件は天野博士も知っていた。地下駐車場の爆発が振動として   この研究所まで届いてきたためだ。だが些細なこととして無視していた。   それも今の情報で状況は一変する。   「そうか……なら確かめるしかないな。」   博士は懐にある携帯端末を手に取った。ある連絡先を選択する。   「こちら保安部。」   「私だ。ちょっと頼みたいことがある。2日前の事件だが    防犯カメラの映像を入手できるか?」   「天野博士お疲れ様です。珍しいですね。またどうして?」   「気になることがあってな…。どうだ頼めるか?」   「地下駐車場のデータが何者かによって消去されていて復元は不可    なんですが……45階の大ホールの映像ならあります。」   「それで構わない。私の端末まで転送してくれるか?」   「わかりました。」      天野博士は本社ビルの保安部に連絡を入れた。2日前の事件を   確認するためだ。数分後端末にアラームが鳴り確認すると一つの   映像データが転送されていた。博士は指で端末をなぞり映像を   再生し始めた。   その映像には大ホールの扉の前に集結しているテロリストが   映し出され、扉の横で壁に穴をあける準備をしていた。博士は   映像をシークし先に進める。指を動かし映像を早送りしていた   ところである画像が目に留まる。博士は少し前に戻り再生する。   一人の少女がテロリストと戦闘を繰り広げる。コマを落としているか   と錯覚するくらい動きが素早く何をやっているの瞬時には理解できない。   どんどんとテロリストが倒れていくところだけが確認できた。何度も   動画をループさせるがやがてある部分を一時停止する。博士は動画を   拡大しある一点にピントを合わせる。          
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