第4章 帰還せしモノ

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  ここは外国のある場所。森に囲まれた斜面を数人の男が滑り込むように   降りていった。漆黒の闇が静寂の森を覆いつくす。その中で響く銃声、   そのあと聞こえる叫び声、男たちは態勢を立て直すように勢いよく駆けて   行く。大きな岩が見えたところで男は岩の影にスライディングして身を   隠す。そのあとにもう一人男が続いて岩に体を隠した。   2人の男は岩から体が出ないように真ん中に縮こまるように体を寄せる。   男は迷彩服に戦闘用のベスト、自動小銃を身に着けている。男の一人が   弾倉の確認をしていた。2人とも息が荒く、目の焦点が揺らいでいた。   まるで恐怖という魔物に首をつかまれているかのようだった。   「見たか?」   「いや……速すぎて何が何だか分からなかった。あれはなんだ?」   男の一人が岩の影から覗き込もうとする。すると次の瞬間なにか大きな   物体が高速で飛翔してきた。男は慌てて頭を下げる。物体は岩に衝突   してバラバラに飛び散った。だが2人の男はその物体を認識すると同時に   恐怖に慄く。   それは先ほどまで人間だった肉塊だった。高速で岩に衝突した衝撃で   血が肉塊の形で岩にこびり付いていた。しかもよく見ると体の一部   に獣で引っかかれたような跡や咬みつかれた跡が見受けられた。男の   一人がその生々しい状況に嗚咽を起こした。      「何なんだよ!一体。たった一人だぞ、たった一人の兵士に…」   「人食(カニバル)い……」   「ま、まさか、あんなのただの伝説だろ……」   男たちの口は震え顔面は蒼白だった。弾倉を交換しようとするが   手も震えうまくいかない。   「人食(カニバル)いは単独で動く、この残虐さ、間違いない。」   「戦場で敵を食うってのは本当なのかよ!化物じゃねぇか!」   「奴を見て生きて帰ったものはいな……」   男が声を出そうとしたその時木々がざわざわと喚く。   2人は警戒し天井方向に銃を向けた。          だが時すでに遅し、黒い大きな物体が高速で天頂から飛び込んでくる。   物体には四肢があり人というか獣のように見えた。腕のようなものを   思い切り振りぬくと2人の男の胴体が裂け、血しぶきが舞う。瞬時に   2人は絶命した。         
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