第1章 花蓮と透馬 

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 少女が突然髑髏の男の視界から消えた。次の瞬間、真下から衝撃が襲う。    少女は右半身になり、背中を半分男に向けるように構え右足を真っすぐ伸ばし  髑髏の男の顎を下から蹴り上げた。履いていたパンプスの踵がねじ込むように  髑髏の仮面の繋ぎに刺さる。その衝撃は髑髏の男の想像を遥かに超えるものだった。  黒い影は地面から浮き上がるように離れ、髑髏の男は後方に飛ばされた。それより  遥かに高速で顔から外れた仮面がフリスビーのように回転しながら天井に直撃し  そのまま通路のカーペットに落下した。  髑髏の仮面が外された男は2メートルくらい後方に着地した。状況が瞬時に  把握できずすぐに正面の少女を捉えようとした。外された仮面の奥には男性  の顔が見えた。若々しい顔つきからまだ思春期の若者に見える。眼光には  鋭さが見え、鼻だちははっきりとしている。左右対称なその顔つきは作り物  のような端正さともとれた。  男を蹴り上げた少女はそのまま姿勢を低くして駆け寄り一瞬で間合いを  詰める。低い姿勢のまま懐に入り力強く握りしめた右拳を地面すれすれから  滝を駆け上がる龍のように打ち上げた。男はそれをのけぞるように間合いを  ずらし直撃を避けた。少女の拳が男の顎先を紙一重でかすめる。
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