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第3章 深紅の塔(クリムゾン・タワー)
「うぅぅ……。痛ぇよ……痛ぇよ」
男のうめき声が聞こえる。ベットのある狭い個室に横たわる
男の顔には大量の脂汗が滲んでいた。男の右手は視線の先に
あるがピクリとも動かない。ベットの頭部分からクレーンの
ようなアームで吊り上げられてあり、右手には金属の棒が
手首から指に沿って突き刺さっていた。
男は自由になっている左手で緊急呼び出しのボタンを
押し続けるが誰も来る気配がない。ベットから口元まで
伸びたチューブを男は咥える。水分を補給しているようだ。
どれくらい男は押し続けただろうか分からない。
1分とも10分とも思えるほど時間の感覚が
なくなったころようやく扉が開いた。
中に入ってきたのは白衣を身に着けた20代の男性だった。
男性はベットの男が左手に握りしめた呼び出しボタンを
手から引き剥がしベットの横にある棚に置いた。
どんなに左手を伸ばしても届かないくらいの位置
にあった。
「何で痛み止めくれねぇんだよ!」
ベットの男は白衣の男性に向かってドスのきいた
声を上げる。白衣の男性は何食わぬ顔で答えた。
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