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第2章 平穏は暗闇の中に
いつもと変わらない日常のはずでも、一人の人間との出会いで現実は大きく
変わることがある。未来も大きく変わることがある。その時は分からなくても
後々振り返ったときに初めてわかるものではないのだろうか。
学校法人桐生学園に今日一人の生徒が転校してきた。彼の名前は栗須 透馬。
この時期の転校生はとても珍しい。休憩時間になると多くの生徒が透馬の
元に集まってきた。女生徒が数名透馬の顔を見ながら興味ありげに
質問をする。
「ねぇねぇ。栗須くんはどこの学校から来たの?」
透馬は表情も変えず冷静なトーンで答える。
「学校へは行ってないよ。病気になってずっと入院していた。
でも体調がよくなったからここに転入したんだ。」
「そ……そうなんだ。」
女生徒はその答えに動揺を見せた。透馬の無機質な返事もより助長させる。
「じゃあさ。何か趣味とかある?」
話題をそらすように別の女子生徒が尋ねる。
「別にないな。普通に生きることか。」
「それって趣味じゃないけど……」
透馬の受け答えに女生徒も言葉が詰まる。感情の起伏があまり感じられない
ロボットのように見えた。
そんなやり取りを教室の扉で花蓮はじっと見つめていた。花蓮の記憶には
2日前の事件がフラッシュバックする。あの時確かに仮面の下の素顔を見た。
眼鏡をかけているとはいえ見間違えるはずがない。あの髑髏の男だと
確信している自分がいる。ただ何の目的でこの学園に来たのか?
気になって仕方がなかった。
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