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「行ってきまーす」
「いってらっしゃーい。ほら、あんたもゆっくりしてないで、早く食べちゃいなさい」
「へーい」
急かされても俺に急ぐ気はない。遅刻スレスレのスリルを味わいながら、優雅な朝を過ごさせてもらうのであった。
程なくして、俺は重い足取りで家を出た。
登校している間に時間があるので、ここで軽く我が家の自己紹介をすることにする。
俺の名前は高良田静久。普通の人より少しだけゆっくりな時間を生きている高校3年生だ。
朝から俺の命を狙ってきたヒットマンがうちの妹こと高良田日和。まさに日和という名前が似合う天真爛漫なやつだ。
父さんは高良田務、俺が中学の頃に会社から通達を食らい今は海外に単身赴任している。俺の部屋が毎月壊されるにも関わらず元通りになるのは一重に父上のおかげなのだとか。
そして、最後に父に変わり我が家の大黒柱をしてくれているのが高良田真間、母さんだ。家事全般をこなしつつ、俺と日和を幼い頃から育て続けてくれているとにかくすごい人だ。
以上こんな感じでうちの家族は構成されている。
さて、学校の校門までたどり着いたが。
「なあ高良田?、今日も遅刻寸前で呑気に歩いてくるとは、いい度胸してるじゃないか。なあ?」
校門前でジャージ姿に竹刀を持った熱血漢が立ちはだかる。このご時世に生息しているとは思えないほどの時代錯誤っぷりだ。
「先生!今日も寒い中、登校時間目一杯までご苦労様であります!」
「誰のおかげでご苦労様をしてると思ってんだ!ああ!」
制服の襟元をグイっと捕まれる。
キーンコーンカーンコーン……。
あぁ、こいつさえいなければチャイムがなり終わる前に教室まで行けるってのに。
「この時間が最もお互いのためにならないって思いませんか」
「いいや、生活指導であるこの熱血国男。この時間が最も教務を全うしていると感じるものだ」
「相変わらず元気ですね...」
なんとかして、襟元の手を自力で剥がそうとするも、国男の手は石のようにピクリとも動かない。
「ははは、俺から逃げようたってそうはいかんのだ」
「生徒を遅刻させようとするなんて、それでも教師か!」
昨日欠伸しながら素通りしたのがよほど癪に障ったらしい。
「せ、先生。そろそろそのへんにしといてあげてはどうでしょうか」
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