永遠の始まり、断絶の終わり

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このタイムマシンの外観は、人が入れるほどの大きさのカプセルに似ている。外側はとても滑らかで、丸っこい。真ん中の部分は扉が有って、中に入る事が出来る。扉はガラス状の、光を透過する素材でできているから、誰かが入っていたらすぐに分かる。 中に入ったら、扉をきちんとロックして、起動ボタンを押せば良い。どこに、どんな時代に飛んでいくのかを指定する事は出来ないけれど、発進した所に戻ってくることはできる。複雑な計算式を使ったけれど、今の僕にはこれが限界だった。 僕は歩いてタイムマシンの周りを眺めた。磁器のようで美しい。美しいけど、扉に大きく「タイムマシン」と書いたのは失敗だったかもしれない。 僕は扉越しにタイムマシンの中を見た。勿論、誰も入っていない。何故なら、僕が最初に使うからだ。 そもそもの始まりは、僕の友人との賭けだった。 僕の友人、仮称A君は、僕と同じ科学者だった。A君は言ってしまえばとても現実的で、頑固だった。一方僕は、自分で言うのもなんだけど、理想主義だったり、楽観的だったりした。 それで、賭けの話だけど、ある時、僕とA君の二人で居酒屋に行った時に、僕たちは口論した。 A君は、時間を飛び越えることなんて出来ない、と強く主張した。どんな計算式を使っても、どんなエネルギーを使っても、出来ないと言ったのだ。何故かと僕は聞いたけど、彼が述べた複雑な計算式を、僕は覚えていない。酔っていたから。 僕はA君の主張に反して、時間を飛び越えることは出来る、と主張した。計算式の上では出来るはずなのだ。A君が述べる複雑な計算式に対抗して、僕もずっと計算式を語った。酔っぱらっていた事もあって、意味不明な会話にしか聞こえなかっただろう。他の客には悪い事をしたかもしれない。 それで、僕たちは最後に、賭けをしよう、と言った。 僕がタイムマシンを作れたら、僕の勝ち。作れなければ、A君の勝ち。 その賭けも、今日で終わりだ。 だって僕の目の前には、タイムマシンが有るのだから。
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