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時空の裂け目の中は、とても凄まじい光景が広がっていた。
色んな歴史の映像が同時に流れて、これが見られただけでも価値があるけど、目的はタイムマシンの動作確認だ。
暫くすると、またぐわっとタイムマシンの周りの空間が裂けた。
とても眩しい光が僕を包んで、僕は思わず目を瞑った。
光が止んで目を開くと、そこは何と僕の研究所だった。僕が発進した場所と全く同じ場所で、僕は思わずタイムマシンについていた計器を確認した。
その計器は、僕がタイムマシンで発進した時間から、二週間ほど経っていた。
ああ、良かった、と僕は安堵のため息をついた。タイムマシンの実験は成功だ。
僕はタイムマシンから出た。僕の研究所だから、どこに何が有るかなんて全部わかってるし、危険も何もない。
と、思ったのだけど、僕が知らない機械がいつの間にか置いてあった。大きな機械で、色んなスイッチがぴろぴろと光っていた。誰が置いたんだろう、未来の僕だろうか。
ふとそんな時、扉が開く音がした。タイムマシンの扉じゃなくて、研究所の扉だ。
そこにいたのは他でもないA君だった。
僕は実ににこやかに彼に近付いていった。彼は何だか有り得ない物を見たような顔をしていたけれど、それはきっとタイムマシンを見たからに違いない。
「やあ、どうだい、僕のタイムマシンは」
僕がそう言うと、A君は急に納得した顔になった。何だか奇妙だな、と僕が思っていると、彼は口を開いた。
「君、生きていたんだな」
「そりゃあ、生きているに決まっているじゃないか」
「君の生きている現実では、そうなのかもしれないね」
A君は少し奇妙な言い回しをした。
僕の生きている現実? 一体どういう事だろう。
僕が生きているのは、今僕がここにいるのだから、紛れもない事実の筈だ。
そんな風に僕が思っていたのが、顔に現れていたのだろう、A君は僕を手招きしつつ、いつの間にか設置されていた機械の前に来るように言った。
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