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「一体何だい、この機械は。と言うか、僕の研究所だろう。未来の……いや、ええと、現在の僕の許可は取ったのかい?」
僕がそう言うと、A君はとても曖昧な顔をした。悲しんでいるような、怒っているような、何とも言えない顔だ。
「それじゃあ一つずつ言っていこうかな。多分、君には理解しがたい事だと思うけれど、二つしかないからよく聞いてくれ」
「何だい、勿体ぶって。今日のA君は、随分と変だぞ」
「変にもなるよ。だって有り得ないことばかりだからね」
A君はそう言って、機械を指し示した。幾つもの計器があったけど、A君は特にその一つを指さした。
「まず一つ目。君は、この時間軸に存在しない」
「ははは、急に何を言ってるんだ。だって、僕は今ここにいるじゃないか」
僕が笑うのを、A君は真剣な眼差しで見ていた。僕は笑うのを止めて、きちんと聞くことにした。
「君は、二週間前から行方不明になっている。ある日を境に、完全に痕跡が消えたんだ。この機械は、君の存在を探す為のもので、この機械は、君がこの宇宙に存在しない、と結論付けたんだ」
「何言ってるんだよ。だから、僕は今ここにいるじゃないか。ほら、その機械だって、この数字僕だろ? 今ここに僕が居るって言ってるじゃないか」
「これは今君がここに現れたからだ。君が、タイムマシンから現れたからだ」
A君が言おうとしている事が今一つかめず、僕は首を傾げた。おかしい、タイムマシンが動いているなら、僕はこの後元の時間に帰って、ここにいるはずなのだから。
「多分理解していないと思うから、二つ目。時間軸は、君がタイムマシンを作ったという状況を無かったことにした。矛盾が起こるからだね」
「おいおい、何言ってるんだよ。今君の目の前に、タイムマシンは有るじゃないか」
「だから、有り得ないことばかりだって言ったんだよ。それじゃあ説明しよう」
A君は紙を取り出して、数式を書き始めた。
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