そういえば、いつからそう呼んでいたんだろう

5/7
3270人が本棚に入れています
本棚に追加
/555ページ
   もう帰れ、と逸人にドアを閉められた圭太だったが、まだ、ぼんやりそこに立っていた。  芽以と逸人が話している声が微かに聞こえてきたからだ。  なにを言っているのかわからないが、ちょっと甘ったるい感じの芽以の声に、その声がつい最近まで、いつも自分の側にあったことを思い出し、目を閉じる。  そうすると、芽以の声がよく聞こえてきた。 「なまはげ」  ……なまはげがどうした、芽以。  いや、さっき、逸人が言ったからか。  そういえば、あいつ、なまはげ嫌いだったな、と思い出す。  子どもの頃、お歳暮になまはげが送られてきたことがあって――  いや、正確には、なまはげというイベントを体験するお歳暮だったのだが。  親たちは知っていたようだが。  大晦日の夜に突然、なまはげが家に押しかけてきた。
/555ページ

最初のコメントを投稿しよう!