結婚とはイバラの道だ ~パクチーの王様~

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  「さっき、騒ぎがあったんだって?  早く来ればよかったー」  閉店間際、店に寄った日向子が厨房を覗き、そんなことを言ってきた。 「阿呆か」 と言いながら、逸人は、 「なにか食べるのか?」 と訊いている。 「いや、今から出かけるから」  なんとなく、誰とっ? と芽以は思ってしまった。  この間、日向子が、 「私、ようやく、圭太の呪縛が解けたのよっ」  などと抜かしていたからだ。  だが、そんな芽以の顔を見て、日向子は笑う。 「やあね、圭太とよ。  誰だと思ったの?」  ……静さんだと思ってました、と思っていると、 「この間、呪縛が解けたって言ったのは、圭太に固執するのはやめようと思ったって意味よ。  圭太と結婚するかはわからないけど、やっぱり圭太が好き。  一生を共にしたいと思うのは圭太だから。  ……今はね」  その今はね、が気になるんですけどーと思いながら、じゃあ、と本当に時間つぶしに寄っただけだったらしい日向子が去っていくのを二人で見送った。
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